誉田千佳様 女性47歳 胃癌
※ご家族様のご希望で本名で掲載させていただきました
家族構成
夫49歳 長男18歳 次男16歳 長女11歳
現病歴38歳の時に発症。長女を出産直後に体調不良あったが産後の肥立ちが悪いせいかとそのまま様子を見ていた。その後の健康診断で胃がんStageⅢaと診断され、幽門側2/3切除した。その後7年間再発なく過ごしてきた。その間に介護福祉士の資格も取り、仕事を始めていた。44歳の時に東日本大震災があり、実家の福島県南相馬市も甚大な被害を受けた。そのストレスもあったか不明だが生理不順や体調不良が続き、PETやCTの検査の結果、胃がん転移疑い両側卵巣腫瘍と多発骨転移と診断された。2011年7月、両卵巣摘出の確定診断で、1年生存率が10%と告知された。QOLを優先し、自費での樹状細胞免疫療法や漢方を始め46歳(2012年10月)の時に職場復帰、韓国旅行も2回行けた。2013年4月に骨転移が全身に広がり緩和ケアへの移行を決意。6月に退職。7月より訪問看護開始。10月より訪問診療開始。
11月5日20:25 大勢のご家族に見守られ永眠された。
訪問看護を行うにあたって
[生活状況と介護の状況]
訪問看護を開始するまでは、子供たちも学齢期であり、夫と本人の母親や本人の姉などが、時々来てくれていた。
夫は技術職であるが、本人の薬の管理や治療方針について、可能な限りの情報収集をしており、キーパーソンの役割を担っている。
[生活上フォローが必要な要項・ニーズ]
下肢のむくみが著明であり、下肢疼痛、歩行困難のため転倒のリスク
徐々に体調が低下していくことへの精神的サポート(本人・家族)
疼痛コントロール
家族が行える現実的な介護手技の支援
ご家族からのメッセージ1 訪問看護開始までの気持ち
最初は率直に言うと、訪問診療、訪問看護の話が出たとき、何?て感じでした。「まだ早いのでは、今はまだいいや、まだまだ元気な妻がモチベーション下がるから」と思いました。
妻もそう思っていたところがありました。家に医療者に来て頂き処置されることは、核家族で普段は想定外ですし、元気なうちは実感として素直に受け入れられない状況です。末期がんで、在宅医療方針を選択はしていましたが、「まだ在宅医療って早すぎるんじゃないの!」と妻も私も思っていたのが正直なところです。
ただ、主治医の濱中先生は外来時、早くその環境に慣れるのも良いのではとの提案を頂き、山田看護師さんに訪問看護をお願いました。
ご家族からのメッセージ2 訪問看護を開始してからの気持ち
いざ訪問看護を開始すると、今までなかった日々の細やかなバイタルチェックを頂きながら、身の上話に花が咲き、身体的苦痛から遠ざけるコツ、生活上の留意点から、メンタルの在り方、その上家族の心の在り方までトータルにご指導頂きました。
末期がんは何か辛い症状が発症したら、訪問看護による緩和ケアをすぐ開始したほうが、結果良いのではと、今では思っています。
訪問医療は、診療でも看護でも、患者さんの命を最期まで輝かせると同時に、その後、残された人々の心の中に患者さんの存在を宿すことにも大きく寄与していると思います。
ご家族からのメッセージ3 訪問看護と訪問診療の違い
訪問診療は診察、薬や処置の指示が主体でそれは大事なのですが、訪問看護は手厚いケアがあることです。寄り添って、体を拭いて頂く、マッサージ等‥正に触れあいを感じました。不安な患者に、じっくり耳を傾けて頂きながら触れあいがある事、心と身体、本当にかゆいところに手が届くケアだと思いました。
ご家族からのメッセージ4 緩和医療に望むこと
緩和医療スタッフの皆様に望むことは、病気などで苦しんでいる患者さんやご家族が、少しでも希望を抱き精一杯生きて頂くため、身体と心の緩和、すなわち「命の輝き」のため一所懸命、寄り添って、ベストな解をお互い模索しながらサポート頂くこと、それだけです。
今振り返れば、緩和ケアは旅立ちの準備の意味で在るのではなく、限りある命を最後まで輝かせるためサポート頂くこと、可能なら家族のいる自宅で、と私は理解しました。
ご家族からのメッセージ5 看護学生さんへ
是非、緩和医療の職を目指す皆様には、患者さんが旅立った後、患者さんとご家族が、「あの人にお世話になって本当に良かった、感謝。」と思われるような人を目指して下さい。そのため全人的な心と技量を高めて頂き活躍頂きたいと思います。そしてこれは一夜漬けで出来ることではありません。仕事を愛し、人を愛し、長い経験を積まなければ成せる技ではないと思います。
そして可能なら、患者さんの最期、いろんな事情があると思いますが、皆さん、きっと病院より住み慣れた自宅で逝きたいのが本音と思います。患者さんの本音を聞いて寄り添って、一緒にベストな解を導くことも、現在の「がん緩和ケア」の重要な役割であり、本質だと考えます。
ご家族からのメッセージ6 子供たちから
次男(高校1年):親切にお世話してくれて本当にありがたかった。
長女(小学5年):山田看護師さんが、じっくり話してくれたこと、嬉しく思っているよ。
長男(高校3年生):父から母の病状の話を聞いたときに、自分の中では、最期は家族と一緒に家で過ごすという選択肢しかなく、山田看護師から在宅看護のガイダンスを頂いた時も意志は変わらなかった。訪問看護が始まって、母が意外と嬉しそうにしていることに驚いた。医療面だけでなく、友人のような人間関係で母に接してもらえたことも自分自身もうれしかった。
ご家族からのメッセージ7 言葉の力
訪問診療も併用開始した時、訪問看護の共通項として感じたことは、言葉の力です。病院で例え入院していても、なかなか出来ない、ゆっくりした会話のリズムが訪問医療には確かにあります。
言葉の力は凄いと思います。医療的には素人の患者や家族が苦しんでいることを的確に捉え、言葉で癒しを与えて頂いたことが、どれだけ闘病生活の救いになったか、本当にいろいろな意味で救われました。言葉の力、これは大事ですね。特に医師・看護師さんと家にいながらじっくり会話できることは、今まで経験したことのない機会でした。
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